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摂動展開は場の量子論における標準的な計算手段であるが、QCDに代表される漸近的自由な理論の低エネルギー領域では有効ではない。一方で、まさにこの摂動計算の難しい領域に、QCDのカラー閉じ込めやハドロン質量など、解明の必要のある物理が存在し、新たな計算方法の開発が望まれている。
最近Takaura[1]によって、質量ギャップをもつ漸近的自由な理論において、物理量の解析的構造に着目して、摂動展開を一般化した枠組みである演算子積展開(OPE)を用いて、物理量の低エネルギー展開を求める方法が提唱された。この方法は、物理量$S(p^2)$の、低エネルギー領域で有効な展開として低エネルギー展開$S_{Low}(p^2) = \sum_m c_m (p^2/M^2)^m$を、高エネルギー領域で有効かつ既知の手順によって得られるOPEから得るために、低エネルギー展開のボレル変換を利用する。同時に、OPEにもボレル変換と同一の変換(デュアル変換)を行うが、それだけでは十分ではなく、真の物理量とOPEとの解析的構造の違いに由来するDuality-Violation(DV)項を考えて初めてOPEから低エネルギー展開が求められる。ただし、DV項の代わりに物理量の詳細に依存しない「重み関数」を用いることが可能であり、これによって低エネルギー展開係数の最低次$c_0$が得られていた。
先行研究の不満足な点として、低エネルギー展開係数の最低次しか求められないという点があった。これは、重み関数を発見法的に得ていたことに由来する。そこで本発表では、Takaura[1]の方法をさらに発展させ、①重み関数を系統的に導出する、②DV項を積極的に用いる、の二通りの方法で、一般次数の低エネルギー展開係数$c_m$が求められることを示す。また、ここに現れるDV項が、OPEの漸近級数としての振る舞いと打ち消しあうという性質についても議論する。トイモデルとして$N\gg1$での$O(N)$非線形シグマモデルを用いて本方法の有効性を確認する。
[1]Hiromasa Takaura. “Low energy limit from high energy expansion in mass gapped theory”. In: JHEP 10 (2024), p. 085. doi: 10.1007/JHEP10(2024)085. arXiv: 2404.05589
[hep-th].