18–21 Feb 2024
志賀レークホテル
Asia/Tokyo timezone

新物理の発見に向けて:ミュー粒子異常磁気能率と格子QCD計算

18 Feb 2024, 20:00
1h 30m
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Speaker

松本 信行 (ボストン大学)

Description

ミューオンの異常磁気能率 (muon g-2) はディラック理論のg因子: g=2 に対する量子補正を測るものである。この物理量は理論・実験ともに高い精度で計算可能であり、標準模型に登場する粒子の多くが寄与するため、現行の素粒子物理の理解を検証するのに適した物理量として長く研究されてきた。現在、両者に要求されている精度は 10^{-10} の桁に及び、理論値と実験値の間に見られる乖離の可能性について、理論・実験の両面から綿密な検証が進められている。理論値が持つ不定性の大部分 (90%以上) を占めているのは電磁カレントを介したハドロンの寄与である。従ってこの寄与を第一原理的に計算するためには場の理論の非摂動的定式化が必要であり、格子QCDはこの面で大きな成功を収めてきた。実際、BMWコラボレーションにより、2021年には R-ratio を併用した従来の理論値と匹敵する精度で純粋な格子計算が行われ[1]、これに追従する多くの研究と合わせて、これまで見られていた乖離の大部分がハドロンの寄与に由来するらしいことと、さらに詳細な問題の切り分けにより、具体的な要因がハドロンの低エネルギー帯にあるだろうことが分かってきている。本講演では、場の理論の非摂動的定式化の必要性と格子QCDの枠組みについて広く触れたのち、g-2 のハドロン真空偏極 (HVP) における格子QCDの適用についてRBC/UKQCDコラボレーションの計算[2]を中心に述べる。

[1] Sz. Borsanyi et al. [BMW Collaboration], Nature 593 (2021) 7857, 51-55 [arXiv: 2002.12347[hep-lat]]
[2] T. Blum, NM, et al. [RBC/UKQCD Collaboration], arXiv: 2301.08696 [hep-lat]

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