Conveners
ATLAS実験、原子核、ミューオンビーム、CMB
- 山崎 祐司 (神戸大学)
暗黒物質の有力候補であるWinoやHiggsinoがLSPとなるSUSYシナリオにおいて,荷電ゲージーノは有意な寿命を持つため内部飛跡検出機内で崩壊し消失飛跡と呼ばれる特徴的な短い飛跡を残す.本講演では,重心系エネルギー13TeVのLHC-ATLAS実験におけるRun-2全データを用いたピクセル検出器 4 層で構成される消失飛跡を残す長寿命チャージーノの探索結果について報告する.
消失飛跡を用いた超対称性-暗黒物質探索は、短い飛跡を扱うという点で解析の難易度が高い。ただしデータや検出器の理解が進んだ現在は、解析の工夫によりデータ量を増やさずとも感度が向上することが期待されている。本講演では本解析に特化した新しい飛跡再構成による信号取得効率の向上と詳細な背景事象の理解を踏まえた新しい背景事象の見積もり手法による消失飛跡探索の次世代解析について発表する。
アニーリングマシンは近年急速に発展している技術であり、現在実用化段階にある。組み合わせ最適化問題を非常に高速に解くことが可能で、幅広い分野への応用が期待されている。本講演では、様々なアニーリングマシンを紹介し、その中でもGPUベースのアニーリングマシンを利用して、荷電粒子飛跡の再構成を行う。特に、HL-LHCの厳しい環境下における飛跡再構成性能の評価を行い、その応用可能性について報告する。
トリウム229は原子核としては極低エネルギーな8 eV程度のアイソマー状態を持ち、1000秒程度の長寿命が期待される。レーザー制御することで既存の原子時計の精度を1桁ほど上回る原子”核”時計の実現可能性があるが、エネルギーと寿命の精度はレーザー励起の要請に達していない。我々は核共鳴散乱の手法でアイソマー状態原子核の人工的生成に成功した。今はアイソマー状態からの脱励起光観測と精密測定を目指している。
試料を破壊せずに、物質内部の元素を分析する手法は、考古物など貴重な試料を扱う分野において有用である。近年、宇宙観測用に位置分解能が優れたCdTeイメージング検出器が実用化された。我々は、CdTe検出器と負ミュオンビームによる元素分析を組み合わせることで、J-PARCにおいて、ボール試料へのミュオン特性X線による非破壊三次元元素イメージングを成功した。本講演ではこれまでの成果を議論する。
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)に現れる特徴的な偏光パターンはインフレーションの直接的証拠となる。Simons Observatory実験は2種計4台の望遠鏡を用いて2023年からチリ、アタカマ高地において世界最高精度でのCMB偏光観測を予定している。本講演では実際に観測で用いられる較正システムの開発状況を報告する。